ピザのルーツは古代エジプト? 16世紀のフォカッチャ?
ピザのルーツを探ってみると、古代エジプトにまでさかのぼります。
小麦を挽いて粉にして、水で溶いたものを焼くという食文化は、メソポタミア文明発祥といわれていますが、それが古代エジプトに伝わり、小麦粉を水で溶いたものを発酵させて焼く、というパンに進化しました。
古代エジプト人が作ったパンは、平らな丸い形に成形し、石窯に貼り付けて焼くというもの。まさにピザの原型ですね。
それは紀元前3000年頃のこと。今から5000年前に誕生した、この石窯焼きパンは、世界各地に広まって、さまざまな小麦の食文化に発展していきました。
イタリアで、現在のピザに近いものが作られたのは16世紀のこと。
小麦粉ベースの生地に、にんにく、ラード、塩などを加えて焼いたものがはじまりだといわれています。現在のフォカッチャに近いものです。
その後、よりソフトな生地にバジル、ラード、コショウをトッピングしたもの、小魚をトッピングしたものという2つのタイプが登場しました。
これを「最古のピザ」とする説もあります。
トマトが加わってPIZZA誕生
イタリアで「PIZZA」と名前がついて普及したのは、さらにその後。トマトがトッピングに使われるようになってからのことでした。
その地はナポリ。
16世紀後半から17世紀にイタリア南部でトマトが栽培されるようになり、また続いて、水牛の乳を原料にしたモッツァレラチーズもナポリ近郊で誕生しました。ピザのトッピングにトマトとモッツァレラチーズ、その美味しいメニューは、ナポリの町に瞬く間に広まったようです。
ナポリ初のピッツェリア(ピザ専門店)は、1830年開店の「ブランディ」といわれています。
ピッツェリアが誕生する前は、ピザは道沿いの屋台で販売されていました。しかも、フライし たものばかりでした。薪窯を維持して焼くより、フライは簡単な調理だったのです。
ピッツァ・マルゲリータの誕生は1889年
ナポリピッツァの人気№1メニュー、ピッツァ・マルゲリータの名前は、イタリア王ウンベルトⅠ世の王妃、マルゲリータ(1851年11月20日生まれ、1926年1月4日74歳没)に由来しています。
1889年、マルゲリータ妃がナポリを訪れた際、その記念に当時の有名ピッツァ・イオーロ、ラファエレ・エスポジトとその妻ローザが調理したピザが王妃に献上されました。2人が焼いたのは、3種類。ひとつは、バジルとラードを乗せたもの、ひとつはトマトのトッピング、そしてもう一つは、トマトソースにモッツァレラチーズ、バジルを乗せて焼いたものでした。トマトの赤、モッツァレラの白、バジルの緑、まさにイタリア国旗の色合いのピザをマルゲリータ王妃が大変気に入ったことから、エスポジトは、このピザを「マルゲリータ」と名付けました。
イタリア人移民が焼いたピザがアメリカの人気メニューに
ピザを世界に広めたのは、まぎれもなくアメリカです。今では3兆円産業といわれているピザビジネスの始まりは、1905年のニューヨーク。マンハッタンのイタリア系移民の街、リトル・イタリーで初のピッツェリア、ロンバルディズが開店しました。しかし当初はイタリア人に限られた食べ物だったといわれています。
アメリカ人の人気メニューになったのは、第二次世界大戦以降のようで、イタリアに駐留していた兵士が現地で食べて広まったともいわれています。
ピザビジネスが一大産業になったきっかけは、宅配ピザの誕生も一役買っています。宅配ピザの1号店は1960年、ミシガン州イプシランティのドミノピザでした。日本でも1号店は、1985年のドミノピザ恵比寿店(東京)で、これはアメリカとのライセンス契約で実現しています。日本では宅配ピザといえば3輪のバイクが思い浮かびますが、アメリカの宅配は車、主にワゴン車です。
ニューヨークに次ぐピザシティはブラジルのサンパウロ
意外と知られていないのは、ニューヨークに次いでピザが人気を得ている都市がブラジルのサンパウロだということ。同市には6,000店近くのピッツェリアがあり、1日に消費されるピザは10万枚ともいわれています。もちろん、イタリア系移民がもたらした食文化ですが、トッピングは現地の特長が濃く、ヤシの新芽や、とろりとしたクリーム系チーズ、独特のソーセージなどがあるそうです。
日本のピザは東京オリンピック以降
日本で初めてのピザはというと、諸説ありますが、有力説は、神戸のイタリアンレストランで1944年に提供されたとするものです。戦後間もなく宝塚市にオープンしたイタリアンレストラン、アベーラとする説もあります。
初のピッツェリアは、1954年に六本木に開店したニコラスとされています。同店は昭和30年代に最先端のおしゃれな店とし て、流行に敏感な若者たちの人気を集めました。
ピザメーカーのパイオニアは、東京オリンピックの年、1964年11月設立のジェー・アンド・シー・カンパニー(現株式会社デルソーレ)です。アメリカから冷凍ピザクラストを輸入し販売し、翌年には日本で初めてのピザ工場を東京都目黒区に開設しました。
ニコラスなど有名店はあっても、当時はほんの限られた人たちだけが知っていたピザ。60年代には「西洋風お好み焼き」なんて表現もありました。オーブンもオーブントースターも一般家庭に普及していない時代は家庭用よりむしろ業務用で普及していきました。エポックは70年代のファミリーレストランチェーンの登場です。アメリカ風のメニューとして、ロイヤルホストをはじめ各チェーンの人気メニューとなりました。外食で人気が出ると同時に、冷凍食品のピザやピザトーストなども家庭で親しまれるメニューになってきました。
そして、日本初の宅配ピザが1985年に誕生、大きなサイズのピザを家庭で身近に楽しめるようになったのです。
そして過去10年ほどは、ナポリピッツァの人気が高まってきました。2006年9月には真のナポリピッツァ協会日本支部が設立されるなど、本場ナポリの味が楽しめる人気店が次々に誕生しています。